「なな、雨垂れ」





















雲が泣いた。

或いはつばでも吐き捨てたのか。

ちくしょう、だの、この野郎俺だってなあ・・、だの思いながら。

どっちにしたって良い感情ではないことは間違いない。

でなきゃあんな不機嫌そうな色なんかしていないだろう。






「雲さん、何でそんな鬱なわけ?」




音という音。

声という声を全て掻き消すような悲鳴。

なんか、あーあー唸ってるみたいだ。




「ちょ、耳痛いって」





塞いでも塞いでも聞こえる。

落ちて、何かにぶつかった音とかじゃないのだ。

落ちる、落下する、音なのだ。

それが悲鳴のようにも聞こえて、キンキンと耳の中で谺していく。




いつまで唸ってるつもりだ?



雨だれが頬を濡らして、突然、愛してやろうか、と言われる。

楽になってしまえ、とも聞こえる。

そんな落ちていく音に溺れてしまえ、と。




「みんな言うんだ。

死んだら星になるって。

空に昇ってくって。」



不機嫌な色に染まっていく。

昇ったら落ちるしかない。

落ちたら二度と戻ってはこれない。

水は廻って行くというけど。そうなれる自信もない。





「     」





雨だれが頬を濡らす。

冷たくしてやろうか、と言われる。

頷こうとして、やめた。

出来れば暖かくしてくれないか。

日なんか照らなくたっていいから。

そんな良くない感情でも。










そうだね、不機嫌だ。














「これがさよならだったら」










暖かくしてくれないか・・。